練習したらダメ。

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灼熱地獄とでも言おうか、連日のこの猛暑。
車で幹線道路を走っていると、この暑さの中でも隊列を組んで走っているライダーが結構いる。

日本体育協会公認コーチである私から言わせていただくと、この猛暑の中での練習はしない方が良い。
プロだったりするのなら話は別だが、走るが好きだからとか、レースで目標があるとか、色々な理由があるにせよ、日本体育協会が熱中症予防のための運動指針として発表している中で、WBGTというものがあり、「熱中症予防の温度指標として、WBGT(Wet-bulb Globe Temperature)が用いられます。WBGTは気温(乾球温度)、湿度(湿球温度)と輻射熱(黒球温度)および気流の影響も反映された、総合的に暑さを評価できる温熱指標」というものがある。

・気温35度以上は原則運動禁止
・気温31~35度では厳重注意(熱中症の危険が高いので激しい運動や持久走など熱負担の大きい運動は避ける。運動する場合には積極的 に休息をとり水分補給を行う。体力が低いもの、暑さに慣れていないものは運動中止)

と、非常に耳の痛い内容が書かれている。
で、実際の現場ではどうなっているのか?普通に走ってますよね、暑い暑い言いながら。
で、これが正しいのか?と言えば、正しくない。とはいえ、暑い中で走るアスリートは非常に多く、その言い訳として、レースは暑い中でも行われるし(←これがそもそも間違っているとも言われている)、暑さにも慣れていくし、暑い中で走ると根性付くし、と、科学が大好きで数字が大好きな理数系の人もこういった部分だけ昔ながら「スポ根」を前面に出して暑い中でも関係なく練習に出掛ける。

ここで間違えてはいけないのは、スポ根とは、暑さや先輩の理不尽や臭さや汚さに耐える事ではない。強く速くなる為の最適な方法を、日々集中して手を抜かずに全力で行う事だ。気温35度を超える様な中で暑さに耐えながら走るのはスポ根ではなく、自己満足というアスリートだけではなく、私生活の中にまで入り込んでいる非常にやっかいで抜け出せない精神的な世界。

お盆というもっとも暑い時期に、無理して我慢して走る必要性が本当にあるのだろうか?確かに生まれつき暑さに強い人間っていうのはいるもので、猛暑の中でも僅かな水分のみで何時間も動き続け、翌日からもケロっとしている。しかし、普通の人間は走っている時は十分な水分とミネラルの補給で走り切ってしまうものの、翌日から何だか怠いとか、疲れが抜けないとかいう場合は完全に「弱く」なっている。練習して身体が疲れてからの超回復によって強くなっていくのがセオリーだが、練習の疲れではなく暑さによって防衛体力が消耗してしまっている事がある。こうなってしまうと超回復は見込めなく、数日間では回復せずに練習した効果は無くなるばかりかその後の練習計画すら変更になってしまう。

しっかりとした知識と経験があるコーチや監督がいるチームやクラブだったら、こういった時期に猛暑地での練習や合宿は行わない。とはいえ、会費を頂いている以上はクラブ員が「練習したい」と言ったらなかなか断れないだろう、でもここでいつもと同じように暑い中で練習を行うのではなく、涼しい中で趣向を凝らしてその種目にプラスになる内容の練習をするべきで、「暑くても皆で頑張りましょう~!」と炎天下の中をひたすら走らせるようなコーチや監督は資質に欠けているように思う。最新のスポーツ理論を学ぶ前に、学ぶ事がある。
持久系というもともと苦しい種目を選択する人間ってのは、苦しさはもちろん、暑さや痛みといった苦痛を我慢する能力に長けているというか、我慢する事が美徳、そういうものだと勘違いをしている事が多い。前述したが、スポ根の使い方を間違っている。

間違ったスポ根大好きなアスリートは、こういった事を懇々と説明をしても「練習しないと強くなれないじゃん」と一蹴されてしまう。
そりゃそうだ。練習しなきゃ強くならない。何が言いたいのかというと、バイクがどうとか、ポジションがどうとか、FTPがどうとか言う前に練習環境を考えて改善して少しでも外的要因によって消耗しない環境で練習するって事が大事。

レースという目標があったとしても、暑い中では我慢して練習しない。ちゃんとこういった事を教えられる指導者が増えて行く事も、更なるスポーツの発展に繋がって行くだろう。

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