「回す」の本当の意味

「回せ」。初心者にもレーサーにも等しく投げかけられる言葉。
では、回すというのはどういった動きなのだろうか?この回すという動きは長年に渡って少し意味の違うように伝え広まっている。
本当の意味での回すというのは「ペダルに入力されたパワーの軌跡の接線が理想な方向を描いているか」(何が理想かはグーグル先生で!)なのだが、多くのライダーが回すというと、軽いギアで「シャカシャカ」と回転数を上げているだけなのである。シャカシャカとペダリングをする多くのライダーが、なぜ本当の意味で回っていないのかというと、チェーンのの暴れ具合を見たり、BBの左右のブレを見ると一目瞭然。ペダリング中に足が下支点で一瞬止まってしまう事が多いのでチェーンの張りが僅かに緩み、上支点側の足を踏み込んでチェーンが再度張られるという事が繰り返されるので、チェーンが緩んでは張り緩んでは張りとなって細かく震えている。クランクが1回転する中で力が抜けている場所が無ければチェーンは常に張り続けているのでチェーンの震えは少ない。BBが左右にブレるというのは、上支点から一気に踏みすぎ、そして時計でいう4時辺りから後方に滑らす動作が出来ていない場合に多く起こる。
最近の高剛性なカーボンフレームではこういった動きがかき消されてしまう事もあるが、金属のフレームではこの動きが顕著に出るので、ローラーに乗りながら自分のBBを見ていれば「回ってない」って事が判る。
このシャカシャカと回転数だけ高いペダリングの力が掛っている方向を表したデータを見たら、完全に踏み台昇降運動のように踏む時だけ力が掛っていて、後方に滑らす、引き上げるといった動きがほとんど見られない。バイクを等速で進ませるためにはペダリングも等速のような動きをした方が効率が良いはずだ。
引き上げの動作は意識し過ぎると余計にペダリングがギクシャクしてしまうので、最初は脱力出来ていれば良いだろう。
ちゃんと脱力出来るようになったら、ハムストリングだけではなく、大腰筋、腸腰筋も使って同じタイミングで引き上げ動作を行えば大きなパワーが出る。
という事で、シャカシャカと回転数が高いだけのペダリングは「全く意味が無い」。綺麗に回せた上で高回転ならば神経系のトレーニングとなるが、そうでなければ「何が目的?」となってしまう。

国内でも海外のロードレースでも回転数の低いプロライダーは結構いる。ランスが高回転ペダリングでツールを連勝した事もあり、プロも高回転型にシフトしてきた事もあるが、1日だけのクラシックなどではコーナーからの立ち上がりでも重いギアのまま踏んで加速し、そのまま重いギアのまま走り続ける場面が多々ある。単純な効率といった面で見てみると、トライアスロンのアイアンマンでは回転数が低い選手が多く、70回転台もチラホラいる。回転数が低くても180キロの距離を単独で平均時速42キロほどで駆け抜け、その後のフルマラソンを2時間50分ほどで走ってしまうので、効率が悪いとはとても思えない。
こういう事から、回すというのは「回転数の高い低いではない」という事が理解できると思う。アタックへの瞬間での反応とか、足を止めた後の踏み出しとかを考えると、あまりに重いギアでは踏み遅れるし、軽すぎると乗り遅れる事もある。そういった中で一番汎用性のある回転数が良く言われる90回転辺りであるだけで、ただ単に効率や速さを考えたらこの90回転というのは完全には当てはまらない。
私が考えるには、回すのが下手なライダーほど70回転ほどのゆっくりとしたペダリングで動きの体得をするのが必要だと思う。多くのベテラン?ライダーが高回転で漕ぐ事によって綺麗なペダリングを手に入れられると思いがちだが、それはペダリングの動きを理解し、体現出来る上で高回転で漕ぐと効果があるのであって、右も左も解らない初心者や、いつまで経っても高回転でケツがサドル上でポンポン跳ねるようなライダーは低回転でしっかりと動きを叩きこんでから、徐々に高回転に移って行く事を進めたい。
どんなスポーツでも、動きの体得に速い動きから入る事などありえない。最初は遅く、徐々に速くしていくはずだ。それが、自転車ではなぜか速い動きから教えている不思議。
もちろん、資質がありスポーツ万能な人間ならいきなり出来てしまうだろうが、大半の人間はいきなりは出来ない。「習うより慣れろ」というのは時と場合によって使い分けるものであって、逸早く上達したい、週1~2度しか練習できないといった場合には、慣れる時間も無いから習った方が圧倒的に早く上達する。
回転というのも、慣れの部分が多分にあるので、ペダリングが上手くなるまではなるべく毎日15分でもいいからクランクを回して欲しい。どうしても「踏みたく」なってしまう性を封じ込めよう、少し出来たと思うとすぐにギアを上げ、回転を上げてしまうのは止めて、1週間でもいいから同じ動きを毎日繰り返すと本当に出来ているかどうかが判る。
その日の体調や集中力の違いでペダリングが違ってしまえば、それは「出来ていない」という事になる。ギヤや回転数を上げる前に、回し込みなさい。

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