インターバルの漸増

日本のレースシーズンも開幕し、全国各地でレースが行われている季節になりました。多くのライダーがすでに1レースは終えている事と思います。シーズンの開幕戦を終えると、大体の自分の仕上がりや調子、ライバルとの差が見えてくる。そしてワットや心拍の数値通りの走りが出来ているのか、または数値よりも走れていないのか。レースやポイント練習を終えての修正というのは、数値と感覚的、客観的なズレを一致させていく作業だと思っている。ここがミソで、数値が上がってもレースで成績が出ないというのは、出場するレースの特異性、ピーキング、モチベーション、その日の体調、そもそもの身体の使い方といった様々な要因があるが、この原因をしっかり探して修正する事が一番大切で、単純に「もっと練習しないと!」という考え方は危険だ。万事全てが上手く行って、最後の最後で力負けした場合には「もっと練習」しかないのは全ての世界で同じ。

気温も上がってくると身体も動くようになってくるし、強度の上がった練習をこなしてくと練習の内容も1レベル上げたものとなってくる。私がよく聞かれる練習の内容としては「インターバルの漸増」についてが多い。陸上や水泳でも同じようにインターバルトレーニングは非常にポピュラーなメニューで、大体の公式というか、負荷を上げて行く方法というものは決まっている事が多い。陸上ならば1000mを5本とか、400mを20本とか、走力において設定タイムや繋ぎの流す距離や速さも大よそ公式がある。知り合いのマラソン選手は1kmを42本というインターバルをこなしているが、これはオリンピックでメダルを目指しているからであって、一般レベルのランナーには全く当てはまらない。自転車というものは、回転数(ギア)、登りか平坦か、シッティングかダンシングか、といったように一口にインターバルといってもどこに注意をしてポイントを置くかによって効能効果が随分と変わってきてしまう。この辺の違いについては、海外の著名なコーチやトップ選手と話したり、文献を見ても明確な答えが見付けられていない。人によって違い、「登りの方が安定して強度を維持できるから登りが良い」という人、「与えられた負荷ではなく、自分で負荷を掛けていくから平坦の方が良い」という人もいる。また、実走よりもローラー台の方が良いという人もいる。特異性の原理の視点で言えば、登りには登りの、平坦には平坦の練習が必要となるが、単純な心肺機能といった側面で言えば、登りだろうと平坦だろうとランニングだろうとXCスキーだろうと死ぬほどゼーハーさえすれば全てのスポーツに心肺機能的には応用が効くので何を行っても良い。自転車の場合、登りで強くなりたいのなら特異性の原理からやはり登りを走り、「登り方」の身体の使い方を覚えて、筋肉を鍛える事が重要だと思う。平坦も同じ。だからといってここで間違ってはいけないのは、走り方と心肺機能を高める事を一緒くたにしてしまう事。まずは走り方と心肺機能は別々にして考える。もちろん最初から両方を得られる練習が上手く出来るライダーもいるが、追い込んで走るとフォームがバラバラになってしまうとか、フォームを意識すると高い強度が続けられないとか、こういった事が起こるならば試しに別々にメニューを組み立てて走ってみて欲しい。意外にも上手く練習が出来る事がある。この部分の理解が深まっていくと、数値とのズレの修正が行いやすくもなる。
そして自転車の場合、インターバルの漸増は、負荷(ワット、心拍、回転数)、時間、本数、のいずれから上げていくのが良いのか?これもコーチや選手によって随分と違っている。一番ダメなのが、全てを上げてしまって全くこなせないというものだが、意外にもこうやってしまうライダーが多い。私が考えるには、自分の長所、得意の部分から上げるのが良いのではないか?と。負荷を上げるのか、追い込む時間を伸ばすのか、本数を増やすのか。もちろん目標とするレースの特異性によっても変わってくるが、何故に長所の部分から伸ばす事をオススメするのかというと、レースはもちろん日々の練習でも「自信」を付けることが非常に重要だから。日々の練習を自信を持って行うかどうかは凄く大切で、「全てこなせた!」という成功体験で自信を持ち、一歩一歩積み上げて行く事によって次のレベルに行くので、この自信を植え付けるためにも長所の部分から上げて行く。とても精神的な部分ではあるが、持久系種目なんて結局は根性に勝るスキルはない??ので(根性も一つのスキルだと思っています、いわゆるメンタルトレーニング)、まずは自分自身に自信を持たせてから効能効果のあるメニューをこなしていくとスムースに一歩上のレベルの練習に入っていかれると思います。高いレベルのメニューに飛び込んで、ボロボロになる経験、チャレンジ精神は時には必要だが、毎度同じ事を繰り返して、いつか順応していくとか強くなっていくというのは余程の資質がない限りは潰れて終わります。
私の場合は、自転車一本だった時代はスピードに自信があったので、インターバルの漸増はスピード(距離に対するタイム)で負荷を上げていました。今はマルチスポーツのアスリートという事で負荷は同じのまま本数を増やす事が多い。
本やネットではインターバルと検索すると、緩急走を繰り返す、全力と休息の繰り返し、といったように非常にざっくりとした内容で書かれている事が多く、細かく書かれていたとしても心拍の%やワットでの時間といったくらいで、そのメニューに対する効能効果が細かく書かれていることは稀だ。目標とするレースを分析し、どこのポイントが重要になってくるかがわかればインターバルの内容に対策を盛り込んで、それをしっかり理解して意識して自信を持って取り組むことが最も効果の上がる方法。漠然と追い込んで100の頑張りに対して60の効果ではもったいない。90以上の効果を得られるようにポジションやフォームと同じくらいに高い意識を持ってインターバルを行って欲しい。