滑らない、滑らせない話

ここ数年、世間ではにわかにオフロード系自転車への興味が増えているっぽいです。
それは王滝への参加人数が盛り返したり、クロスの参加人数が激増したり、新たなジャンルであるエンデューロへの期待の声が大きかったり。
世間とは言っても、ロード乗りがオフロードに興味を持ち始めたってのが正しい。特に今年に入ってからは元プロロード選手から現役プロロード選手がマウンテンバイクの公式戦であるJシリーズに参戦してきたり。とはいえ過去にはマウンテンバイクが五輪種目に決まった瞬間にかなりの数のプロロード選手がマウンテンバイクのレースに出始めましたが、トップレベルまで到達したのは2~3人くらいだろうか。これは海外でも同じような事が起きていました。
オフロードに興味を持ち、マウンテンバイクやクロスに乗り始めた昔のロード乗りと、今のロード乗りはオフロードを走ってみて口にする言葉は昔も今も同じで「トラクションがかけられない」、「コーナーで滑る」、「ブレーキング」がほとんどを占めているように思う。その中でもトラクションというのはコーナーでもブレーキでもこのトラクションをいかにかけるか、という事に終始するので少し説明したい。

「トラクション」とは、になると物理的な話になるのでググってもらうとして、簡単にはタイヤを滑らないようにする、タイヤを地面に押し付けるとかそんな感じ。手っ取り早くトラクションを得たいのならタイヤのノブの高いモデルを選べば、土や地面にノブが突き刺さるので簡単にトラクションは得られる。その反面、舗装路や地面の硬い部分ではそのノブが大きな抵抗になる。空気抵抗は低いが重いホイールか、空気抵抗はあるが軽いホイールかに近い一長一短。
タイヤではなく自分自身のテクニックでトラクションを稼ぐ方法がやはりベター。これが上手くなるとセミスリックタイヤやスリックタイヤと呼ばれるママチャリのタイヤ程度の凸凹しかないモデルで、ノブの高いタイヤよりもグリップをさせられる。そして舗装路や硬い路面でも抵抗は最小限にとどまる。ではどのようにスリックタイヤでトラクションを生み出すのかというと「タイヤを地面に押し付ける」。たったこれだけ。ペダルを踏めば勝手にリアタイヤは地面に押し付けられるが、実はこの押し付け方に上手い、下手がある。平地でも激登りでも肝心なのはタイヤが接地している方向に垂直に力をかけられているかどうか。この方向がズレていると「ズルッ」とか「スカッ」っといった感じでホイールが空転する。この辺は感覚の問題になってくるので映像を見たり文章では伝えられないし伝わらないと思う。何度も何度も繰り返すしかない。もう一つは、踏み踏みのペダリングになっているから「ズル、ズル、ズル、ズル」とグリップと滑るのを一コギ一コギ繰り返している場合で、一瞬のトラクション後に空白のノートラクションの時間がある。これは長年ロードしか乗っていなかったライダーに非常に多く、これはバイクが等速度運動をしていないって事。常に一定にペダルが回せていればトラクションも一定にかかるので路面のミューの変化があって滑っても「ズ、ズ、ズズズ、ズ、ズズズ」のように「ズル」の「ル」が抜けてトラクションの空白の部分が最小限になり、バイクが等速度運動に近くなる。トラクションの空白部分があるってことは厳密には失速しているので、踏み返してスピードを戻す分のパワーもセーブできる。特に二つ目のテクニックが低いライダーが非常に多い。マウンテンバイカーでも下手なライダーは多くいるし、全力で追い込んでいる状態でトラクションを上手くかけて走られるライダーってのは本当に数えられるほどしかいない。
こういったライダーはタイヤを常に最適な分だけを路面に押し付けて走っているが、下りのタイムを競うダウンヒルの選手の中には逆に「押し付けない」ライダーもいる。
タイヤと路面があり接地しているから滑るのであって、接地していなければ滑りようがない。凸凹の頂点だけを飛ぶように走っていくという究極な部分になってしまうので深くは掘り下げないが、この「押し付けない」という部分は実に重要なので説明。
ある程度のテクニックが身に付いてくると、トラクションを生み出すための「押し付ける」という事がリアタイヤでもフロントタイヤでも行えるようになる。しかし押し付けながらもその中でコンマ何秒だけ「抜く」事が速く走るためには必要になってくる。ドロドロになったコーナーやキャンバー(斜めの道)では、泥用のタイヤをチョイスして空気圧を落として路面を押し付けても全然グリップが得られない場面が多々あり、こういった時に押し付けてばかりいるとず~っと滑っているだけ。こういった場合は一瞬だけ抜重(これの説明は長くなるのでググって)すると同時にバイクや自分に掛かっている力のベクトルを、進みたい方向に向け直してすぐさま押し付けるって事を繰り返しながら一つのコーナーを曲がる。これが非常に難しいのだが、雨の中のロードで同じタイヤでも滑る人、滑らない人がいる一つの理由でもある。
例えるなら、おしくらまんじゅう。押すばかりではダメで、引いたり押したりするから相手はバランスを崩す。
後は、滑る路面の中にも一瞬だけ引っ掛かる部分、トラクションが得られる部分が必ずある。路面の僅かな凸凹だったり、草だったり石だったり。この瞬間を見逃さずに「クッ」と一瞬タイヤがグリップしたら力のベクトルを進みたい方向に向ける。米に文字を書くかの様な細かなテクニックだけど、上手くなるというのはそういう事だ。
オフロードを走る上で、タイヤにはパターン、太さ、コンパウンド、空気圧がある。この中でクロスなら上限の太さ33ミリ(実測!)の中からパターンで2種類、多くて3種類で空気圧を調整。マウンテンバイクはクロスカントリーとダウンヒルでは全く違うので星の数ほどになってしまうが、クロスカントリーならばパターンで3~4種類(前後で変えたり)、空気圧で調整って所だろう。ダウンヒル等の下り系になるとコンパウンドの硬さが入ってくるので更に複雑に。

オフロード系の選手が30秒くらいサクっと走ったりタイヤをグイグイっと押して「1.8気圧くらい」とか言い当ててしまうのは、それだけトラクションに直結する事で大切だから。
効果的な練習方法として、空気圧を3気圧ほど入れてからコンマ2気圧ほど落としながら同じ場所を何度も走ってみるといい。使っているタイヤが一番美味しく使える気圧、特性や自分にあった気圧というものがハッキリと見えてくる。前後の気圧を変えて走れば、滑り方が理屈として理解できるようになる。

とはいえ体力と根性が一番重要です。
「・・ギクッ・・・」

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