プロの目。

世の中には、いや、自転車の世界にもプロと呼ばれる人達がいる。それは選手だったりメカニックだったりコーチだったり。そんなプロの方々とのとある話。

だいぶ昔の話になるが、腕が良いと言われている方がチームのメカニックとして帯同していた時に、色々とメカについて学ばせていただいた。昔の自転車のフレームやパーツってものは新品であっても精度がまちまちだったり、加工しなければ取り付けられないレベルのものが当たり前に多くあり、バイクを1台組み上げるのには今のバイクよりも経験が要り時間が掛かっていたように思う。(TTバイクでワイヤーがなかなか通らないとかは除く)マウンテンでいえばM970、ロードでいえば7800系から機械いじりとかが苦手ではない人なら説明書を見ながらとりあえず完成車にして、そこそこの変速性能やフィーリングを得られるようになっていると思う。それだけフレームやパーツの精度が上がり、細かな調整がなくてもそこそこ動いてしまう。ネットで安く買って自分で何とか組み付けてとりあえず乗ってるってライダーも多いでしょう。
プロが組み立てるバイクってものはやはり違う。その違いとは、走り方に合わせた調整がされている点だ。メカニックが個人的に面倒を見ているライダーの走りを「ちょっと見てきて」と言われた事があり、そのライダーの後ろに付いてコースを1周走った。走った後にメカニックに気が付いた点を話すとメカニックは「やっぱりな」と一言。私が話したのは「変速のタイミングが遅く、登りで斜度が変わってケイデンスが低くなってから変速する」と説明をしたら「ちょっとコレ見てよ」と言ってチェーンやスプロケットの本当に細かな傷を指摘した。傷の入り方で乗り手がどんな走り方をしているのがパーツに現れていて、このライダーは変速のタイミングが遅いのでトルクが掛かったままで低いケイデンスで変速する事によりスプロケットとチェーンの摩擦が大きく、傷が一方側に多く深く付いていた。私の場合は、加速する際に加速しながら2段一気に変速するクセがあるので、私のスプロケットとチェーンは先のライダーとは違う側に多く深い傷が付いていた。メカニックは走り方に合わせてワイヤーのアジャスターを1/4回転だけ回しておくとか、ワイヤーの取り回しまで変えたりしていました。ここまでハッキリと傷の違いを見たのは初めてだし、これで分かってしまうプロの目に本当に驚いた。
海外のチームでは新品のパーツの刃先をリーマーで1つ1つ削っているのも見たことがある。
ロードの場合も同じで、加速して行く場合にケイデンスを上げてから変速するか、変速してから加速していくのかの違いが現れるようだ。
今のパーツはペダルを踏み倒しながらもストレス無く変速するのが当たり前になってしまっているが、パーツへの負担というものはやはりあるようで、傷をなるべく付かせないように走るっていうのは昔も今も変わっていない。チェーンラインをなるべく真っ直ぐにするとか変速の瞬間は一瞬だけ力を抜くとか昔は当たり前だったテクニックとも呼べない程の事で、車のクラッチを踏んでシフトノブで変速するのと同じで当たり前の動作だったが(こうしないと変速しなかったというのもあるが・・)今のパーツはこんな動作をしなくてもヌルっと変速してくれるので、パーツは知らず知らずの内に消耗してしまっているのかもしれない。
私は昔から人の動きをパッと見てどこがどう動いているのかを見分けるのが得意なようで、ゴルファーでサイクリストの方を見たら小指でハンドルを強く握りすぎててそれが原因でポンピングブレーキが出来ないってのを指摘したり。
プロの目で仕事するってのは単に作る事ではなく、創るって感じなんだと思う。