世界一の走り

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2010年世界チャンピオン、2013年世界選手権3位、オリンピック4度出場でアテネでは銀メダル、シドニー&ロンドンでは4位という驚異的な成績を残してきているスペインのホセ・アントニオ・ヘルミダが来日し、神奈川県の湘南国際村で行われたメリダカップに参戦し、一緒にレースを走った。

今はすでにトレーニングを開始しており、オフは7日間という短い期間を取ったのみだという。
インタビューの中で、現在のXCO(クロスカントリーオリンピック)競技では「LSDは全く必要ない」と完全に否定した。競技時間が1時間30分から1時間45分というルールの中では、長い時間をバイク上で過ごすというのはナンセンスだと。これは若いジュニアの選手にも同じだと言った。という事は、経験の浅い競技レベルの低いライダーにも当てはまるだろう。ホセは乗る日でも午前2時間、午後2時間だという。長く乗るよりも、高強度、高スピード、テクニックに重きを置いてのトレーニングを行っているようだ。

インタビューの中で、トレーニングのメニューを見せてもらった。基本的にはテストを行って強化するターゲットゾーンを見出し、ワット計と心拍計を使ってメニューをこなす。メニューの多くが高強度インターバルとレースに近いペース走で、ロードレーサーにはほとんど乗らない、アスファルトをMTBでロードトレーニングし、メニューはアスファルトでもオフロードでもローラー台でも行う。レースに活きない(的の外れた、自己満足な)メニューは行っていなかった、近年のコースレイアウトにマッチした内容で、ロングクライムはしていなく、20秒ダッシュ20秒イージーを10本のようなものが多かった。話している感じから掴めたのは、追い込んでいる時間よりも、イージーの時間を非常に重要視していた。推測するに、休みすぎるなって事だろう。

ちなみにホセのFTPは6.819W/kg。
オフシーズン明けに計測した数値らしく、トップシーズンに比べて落ちていると。
2012年のツール・ド・フランス覇者であるブラッドリー・ウィギンスが7.0W/kgほどと言われている。FTPはクライマー体型の方が上がりやすいと考えられ、ヴィギンスは身長190cmの体重71kg。ホセは172CMの体重66kg(オフシーズン)。
FTPが6~という数字を見ると、どういった事を行わないといけないのかが分かっているという事もあり、頭が痛くなるというか、正に心技体が全て揃っている世界に入ってくる。日本のライダーは心か体のどちらかを持っているライダーは多くいるが技を教わっていない。そして体と技がある有望なライダーがいても、昔ながらの監督やコーチは「精神論」が好きなので天才肌は嫌われてしまい、有望なライダーは辞めてしまったりする。私はこれを何とかしたい、天才肌で天邪鬼なライダー達が捨てられていっている現状が凄くもったいない。

そして2枚の写真。
世界のトップのライダーと世界をかじっただけのライダーの違い。
この写真はレース後半のタイトターンでの1枚。ホセはバイクと身体のラインが完全に一致し、頭の先からバイクのBBの真下まで1本のラインが引かれているかのように真っ直ぐ。タイヤに一番効率良く加重ができ、安定し、グリップさせられる。
一方の3流の小笠原は頭の先とバイクのBBは真っ直ぐなものの、体幹部分が外側に逃げてしまっている。ウエアのファスナーの曲がり具合で良く分かる。
それと特徴的なのは、視線。
コーナーの半分に来たら出口~行き先を見るっのが基本。その基本を見事に忠実にホセは行っている。顔を完全に横に向けて行き先を見ているホセに対し、私は5mほど先しか見れていない。これではスピードが上がれば上がるほど、先で起こっているかもしれない「何か」に対応が出来なくなるし、ロスになる路面の僅かな凹凸を避けるライン取りが後手後手に回ってしまう。
こんな些細な事を世界のトップは忠実に守り、行動している。インタビューの中でもこういった「細かいこと」への考えはもの凄いものがあった。ブレーキレバーの握り方一つとっても全てロジカル。
1秒のミスやロスで勝敗が決まってしまうのが勝負の世界。

私がレッスンで教えている内容は、まさにこういった事。1%のロスをどう無くすか、1%の出力をどう上げるか。
ホセと走り、ホセの走りを緊張感なく見られたのは本当に本当に大収穫だった。今までは世界のトップの走りを知るには、世界選手権やワールドカップで同じレースを走る時か、コーチとして帯同した時だけで、トップ選手の走りをマジマジと観察している余裕などなかった。それがメリダカップでは存分に凝視できたのだ。

頭の中で点と点が繋がる発見もあり、これから行うレッスンで落とし込んでいけそうだ。

こんな素晴らしい機会を与えてくれたメリダカップ、ありがとう!