全日本ロードを見て

2013年全日本ロードが終わった。
日本最高峰の男子エリートは180キロの距離で獲得標高差が5600Mを超えるとあって、地足勝負のサバイバルレースになるとレース前から言われていたが、蓋を開けてみたらやはり地足勝負になり、後半は集団にならず、個人TTのようなレース展開になっていた。

パワーや勢いで登り切れない登りの長いコースになると、集団内で脚を使わずに上手く潜んで、勝機を窺うっていう走り方は全く通用しなくなる。ライバルと勝負する前にコースに負けないように自分との勝負になってくる。ライブ中継を見ていて、まるで昔のマウンテンバイクのレースのようだった。ライバルをアタックで振り切るというより、ジワっをペースを上げるか、維持してライバルが勝手に千切れて行く。海外のプロレースを見慣れている人にとっては、カンチェラーラのような派手なアタックや、昨年の世界選でのジルベールがカウベルグで見せたアタックでライバルを置き去りにするようなレース展開を期待してしまうかもしれないが、今年の全日本のコースレイアウトを考えれば「耐える走り」になってしまうのも仕方ないと思う。
ライバルと競う前に自分との勝負っていうレースがたまにはあっても良いかもしれない、登りがキツイと言われるジャパンカップですら151キロの距離で獲得標高差が2800Mだし、実業団レースが行われていた小川村の山岳コースは76キロの距離で獲得標高差が約2000M。いかに今回のコースがハードだったかのか、130人出走で完走が16名という人数を見れば一目瞭然。

この完走16名の中で注目する選手が2名いる。7位の武井選手と14位の白石選手。ともにマウンテンバイクがバックグランドの選手で、白石選手に至ってはシマノの社員で普通のサラリーマンである。
こういった地足勝負のサバイバルレースが常というか、地足が全てのマウンテンバイクレースをやってきて、コースに負けないよう自分との勝負に慣れており、その上で6時間を越える長時間のレースに対応できるように乗り込んで身体を作ってきたのだろう。

私も一時期は毎週のようにロードレースに出ていたが、3時間が限界だった。脚が一杯になったり苦しくなるのではなく、長時間走る練習はマウンテンバイクでは必要無いので長時間走る練習はしておらず、そのおかげでロードレースでは3時間を超えるとガクっと集中力が切れて動きが鈍っていた、「これ以上の時間はマウンテンに必要無いから流す~」ってな感じで。

今回のレースのようにレースペースで長時間走り続ける体力、精神力ってのは1年や2年で育つものではなく、コツコツと年単位での積み重ねが要るので、例えば1時間のレースがメインだった選手が半年後の6時間のレースで勝負するのはかなり難しいだろう。ましてや今回のような地足勝負のレイアウトとなれば尚更だ。ただ走るのなら簡単だが、レースペースとなると身体よりも精神的に耐えられない、距離や時間に対する不安。
バイクジャーナル読者の多くと同じであろうサラリーマンの白石選手の完走は、サラリーマンライダーに勇気と自信を与えてくれるものだろう。

同じ長時間のスポーツであり更にレース時間の長いロングのトライアスロン、アイアンマンレースでは日本のプロ選手の勝負に割って入る実力を持つエイジクラスのアマチュア選手達が居る、レースの為、練習の為に100%の時間を割けないのにも関わらず、プロに近い順位、たまにプロをやっつけてしまう。マラソンの川内選手も同じく。

近年はプロとアマチュアのレベル差が縮んでいるように感じる、練習方法やリカバリーの仕方、またはマッサージや機材やサプリメントといった昔ならプロだけが知りえる情報が今ではプロと何ら変わらないタイミングで簡単に手に入るようになった。
スポーツというモノが成熟されてきた証拠でもあり、身近になったという事。言い換えれば、やる気さえあれば誰でも強くなれるチャンスがあるって事!
確かに、プロという存在でなければ出られない大会があるが、それは興行、ショーであると考えれば良いだろう。各競技団体に登録して基準タイムや基準の順位をクリアしてさえすればプロだろうとアマチュアだろうと世界一を決める大会に繋がる大会に出られるとういうのは、アマチュアにとって物凄い魅力があるだろう。

その点、ロードの世界はプロのレースというモノがある世界なので平日開催のレースは当たり前にあるし、そもそもそういったチームに所属していないと出場すら出来ない。
近年の自転車人気で、世界を目指したいけどプロにはなりたくない、っていうライダーも居る。実際に相談を受けたりしたが、残念ながら私の経験では対処出来ず、曖昧な返答しかできなかった。
マラソンの川内選手や、なでしこジャパン等を見て、働きながらも世界を目指すという考えに至ったのだろうが、現状では難しいだろう。

ロードの世界選手権代表になる為にはUCIポイント上位者、全日本優勝者を候補としてそこから選出される。強化選手になるにはプロコン以上のチームに所属している事が確か必要だったと思う。
まぐれで全日本で勝ってしまっても海外レースの経験が無いという理由で選出はされないかもしれない。こういった事から、サラリーマンのままロードレースで世界に挑むのは難しい。
サッカーや野球と違い、日本は海外の様に完全にプロ選手達(バイトしていない、働いていない)だけでのレースが無い。プロチームに入っていてもバイトしているっていうライダーが多く居る現状だし、アマチュアも混ざってのレースにならざるをえないが、アマチュアにとっては今回の全日本の武井選手、白石選手のようにプロに割って入るチャンス、見せ場でもある。
ちなみにマウンテンバイクでは世界選手権には選考基準をクリアすれば出られるマラソンと同じ方式。なのでプロだろうとサラリーマンだろうと公平に世界に挑戦できる。

という事で、サラリーマンでもやれるのだ。やるかやらないか、だけだ。