タイヤの話

タイヤの話。
日本では梅雨があり、梅雨の時期には全国各地で自転車レースが盛大に行われている。そんな事から雨のコンディションでの走りってのは絶対に外せない。
今回はマウンテンバイクでのタイヤの話。
写真には2本のタイヤが写っているが、よく見ると僅かな違いがある。右側のタイヤは、一番サイド側のノブを4ミリ切り落としている。これは後輪用のセッティング。なぜノブを切るのかと言うと、泥ハケ性を狙ったもので、タイヤのノブとノブの間に泥が詰まって、グリップしなくなる、重くなる、フレームとの隙間に詰まるといった事を防ぐため。もちろん、最初から泥用のタイヤはあり、日本のメーカーなら日本の泥にマッチしたコンパウンド、形状、太さで開発をしてきているが、やはり一言で「泥」といっても様々で、赤土のヌタヌタな泥、田んぼのようなとろみのある泥、砂利が混じったサラサラした泥、関東ローム層のツルツルの泥・・・等と実に多種多様。
レース会場によっては1周のコースの中に様々な泥が組み合わさっている事もあり、頭を悩ませる。こういった時はレースを逆算しての天候をまず考える、レース中に晴れるとしたら、森の中のアノ場所の泥は乾かなくてヌルヌルと滑るが勝負のポイントではない、日差しのあるゲレンデの泥は水分は飛ぶほどに乾くが、路面はスポンジのように柔らかく重くなってしまい、この部分が長いので勝負のポイントとなる、なのでこのポイントで軽く走れるタイヤは・・・・と考える。
その勝負のポイントに最高にマッチさせるように、タイヤをカットする。カットの仕方は前輪と後輪では全く違うし、狙う理由も違ってくる。
特にリヤのBB周辺に泥がテンコ盛りに溜まる事が多く、これはフルサスペンションバイク(以下フルサス)になると更に酷くなる。フルサスの場合は、サイドノブが張り出している(パイナップルみたいに)形状だと盛大に泥を溜め込んでいくので、真ん中のノブを残し、サイドを切り落としたりする。しかし、サイドノブが無くなればコーナーでバイクを寝かせると当たり前だがグリップしない、こういった場合は、空気圧を変えてタイヤを変形させてグリップをさせる、より前輪加重で走るようにする、といった方法を取る。後者の前輪加重で下る事が出来るテクニックがあれば、後輪は滑りながら勝手にバイクに付いてくる。真ん中のノブがあるから登りでトラクションがかかり、
サイドノブを落としたので泥が詰まらない。
前輪は後輪よりもサイドノブによるコーナーリングと、真ん中のノブによるブレーキングの重要性が高いので、より高度な経験が必要になってくる。「斜め○○度に向かって5ミリカット」というように、ミリ単位でのカットになってくる。フロントは真ん中のノブの路面抵抗をモロに感じるので、進行方向に対してのカットを入れる。でもブレーキングが関わってくるからノブの剛性が落ちたりするようなカットはマイナスになってしまう。
また、ノブの配列を見て、タイヤが回転している際に泥がどういった動きをするかをよく観察する。体重による加重によってタイヤに付いた泥がノブとノブの間をピンボールの様に押されてサイドに向かって押し出されていくのだが、ノブの形や配列によっては泥が動かずにどんどん付着していく事もある。ある程度のスピードが出れば遠心力で泥は勝手に飛んで行ってしまうが、泥のレースの登りでは時速10キロも出ないので飛んでいく事は叶わない。
こういった場合はタイヤ上での泥の流れを見極めて、泥が引っ掛かってしまうノブの角を数ミリカットしてやるだけで泥詰まりがかなり改善される事がある。
他にも、ノブにスリットを入れたりする事もあり、硬くて変形しないノブに対して変形を促すようにスリットを入れる。これによって車で言うスタッドレスタイヤのようなサイプの効果がある。

滑る泥の中を下って行くという事に対して「度胸」とか、「気合い」だとか言うライダーもいるが、速く確実に走るというのは実際は物凄くシステマチックな事の上に成り立っている。初めてのレース会場で泥になれば情報戦になる、「天気は?泥はどう変化するか?」という事を地元のオジチャンやローカルライダーにしつこいくらいに聞いて回る。そして、自身の経験はもちろん、メカニック、タイヤサービスマンとも話をし、何種類ものタイヤを用意してスタートに備える。
マウンテンバイクはクレバーな奴が強い、頭脳戦。
という事で、理数系のライダーが泣いて喜ぶような数字の世界がマウンテンバイクにはテンコ盛り、サスペンションはこだわりだしたらレーシングカー並みに大がかりなテストをしてサスペンションの動きの量を全て計ってアレコレ変えながらセッティングを煮詰めていく世界。

タイヤの他にも、チェーンオイルも下地作りから始まり、コンディション毎にブレンドして、塗る量を変える。
これはまた後日にでも。