バッソの食事はおとぎの国の話

バッソ、サガンの食事ネタが大いに賑わっている。

いや、ちょっと待って欲しい。この話はある意味、極々一部の「特殊」な例であり、アマチュアレーサーはもちろん、同じレベルにあるプロでも皆が皆、同じだというわけではない。

実際に、スバル・ゲイリーフィッシャーに所属時代にチームメイトだった2012年のジロ・デ・イタリア覇者であるライダー・ヘシェダルや、トレックに所属し2001、2002年のMTB XC世界チャンピオンで、ロードレースでもアメリカのクリテリウムで当時のUSポスタルチームを置き去りにして勝ちまくっていたローランド・グリーンなんかと食事をした際に見たものは、意外や意外、健康に少し気を使っている人が食べるような「健康的な食事」であった。

肉が運ばれてきて脂身が沢山付いていれば取り除く、ドレッシングはかけない、かけるとしたらノンオイル、チーズは香りがする程度に少々、油分は動物性からではなく植物性から(ナッツ系は本当によく食べていた)、炭水化物は抜かない、ケーキ1個を3~4人でシェアする、といった具合で、バッソが言う「食べ過ぎない」、「体に良い物」ってのは共通している。シーズンインをして、カルフォルニアのシーオッタークラシック等のレースが始まり、身体をナショナル選手権、9月の世界選手権に向けて絞り始めるような次期にチームに合流してチームディナーをしていても、確かに「チーズは抜いてくれ」、「オイルはカットで」、「フライポテトは無しで」といったように各選手毎にウエイターに注文していたが、食前酒が出されれば飲むし、食後にティラミスが付いてきたなら、やはり1個を数人でシェアして食べていた。

あれは食べない、これも食べない。ではなく、ある物、出された物をどうやって食べるかを目標のレースから逆算し、今の体重やその日のトレーニングを考えて食べていた。

塩ゆでパスタばかり食べるというのは、外国人特有の少しオーバーに飛躍して言ったものであろう。バッソも言っていたが「体質」による事も大きいと思われるし、塩ゆでオリーブオイルパスタはあくまで主食がそれであって、他に野菜、肉、魚はちゃんととっている。言っている意味は、ボロネーゼやカルボナーラは一切食べませんよ。という意味だ。

1990年代後半から2000年代前半に活躍し、ツールの覇者であり総合2位が5度もあるドイツのヤン・ウルリッヒはオフシーズンに激太りする事が有名で、平気で8キロほど体重が増えてシーズンインする事があったという。それでもツールという世界トップレベルのレースで活躍しているのだし、それがヤンなりのピークへの持って行き方だったのだろう。しかし、やはりそれではシーズン前半の成績が芳しくないという事もあってか、プロ人生後半はオフシーズン太りにも気を使って、体重増は最小限に留めていたようだ。

では同じように体重が軽い方が有利で、持久力勝負であるマラソン選手ではどのような食事をしているのだろうか?ロンドン五輪マラソン代表の藤原新選手が春にアメリカでの合宿を行った際に、現地の合宿地にお邪魔して食事をした際に見たものは「何でも食べる」だった。ピザを「コレ、美味いっすね」と言いながら食べ、ハウスワインを飲み、ポテトフライを2~3本ムシャムシャと食べていた。

山籠りをする修行僧の様な生活かと思いきや、「明日の朝練は起きてから、走る気があったら走ります」ってな具合。確かに年間100レースを超えるロードレーサーと真剣なフルマラソンなら年間数本のマラソンランナーを同じと考えてはいけないのかもしれないが、世界により近く、そして日本人に合った食事内容の経験数や経験値は自転車よりマラソンの方が遥か~~に深く多いので、同じ持久系で体重の依存度が高い種目なのでマラソン選手の体重管理は勉強になると思う。

それにアマチュアやホビーレーサーはプロロードレーサーとは違い、年間20レースも走れば多いくらいで、ピークの作り方も分からず、そもそも突発的に「出たい」とシーズン中にもかかわらずエントリーしてそのレースを目標にするくらいなので、塩ゆでパスタを不味い不味いといいながら食べて、腹をグーグー鳴らしてながら寝て、飲み会に行ってもサラダと豆腐とウーロン茶・・・人生を掛けたドMですね!と。

ある程度の節制はもちろん必要だ。とはいっても強制に近いような不健康的なダイエットは絶対に身体に良くない。人生を掛けて一生に1度の大勝負なら解らないでもない。が、とはいっても優勝しても莫大な賞金を得られるわけでもないので、不健康だと知りつつも勝つためだけに強制ダイエットをするのはやはりナンセンス。

健康的な身体を保ちつつ、持久力とスキルと根性を鍛え上げて勝つのがアマチュア、ホビーレーサーの務めであろう。

少しアドバイスをすると、長距離レースだからといって大食いは必要ない。長距離レースの朝に大食いをしてグリコーゲンを詰め込むライダーも多くいるが、それよりも普段の練習で、脂肪を燃焼させて走れるようにする練習をおこなう事が重要。この部分がしっかり育ってくると、前日からの摂取カロリー、当日の摂取カロリー、走行距離と心拍の相関図が出来上がり、例えば心拍がMAXの80%で3時間走る場合に必要なカロリーは○○カロリーといったように計算できるようになる。

もちろん、MTBやロードレースのように不確定要素が多く、マイペースを保てない種目では完全には当てはまらない場合もあるが、脂肪を燃焼させて走れるレベルを高くしておくと後半に強いライダーとなる。ちなみに僕はLSDや乗り込みが大の苦手だったので、こういった部分の発達は弱く、レース後半に失速するライダーだった。なので補給食は多めに取り、回復させるためにもレース後に炭水化物を素早く取っていた。

再度、口を酸っぱくして言おう。塩ゆでパスタを食らい続けるのは、おとぎの国の話だ。決して真似をしてはいけない。