モノより身体

今回のテーマは耳が痛いライダーも多いだろう「モノより身体」だ。

10数年前のアマチュア時代から付き合いのある自転車マニアの友人が、競技からは一線を退いて10年近く経ってトライアスロンに復活してアイアンマンレースに出まくっている。
そこまでは良いのだが、10年間サボり続けた怠けた肉体にいきなりの高負荷のアイアンマンは根性と心は付いて行けても齢30を超えた肉体は付いて行けず、昔の落車の古傷の腰、肩、顎、更にはランナーの怪我の定番の一つである足底筋膜炎を発症したりと故障しまくっている。
常々、局部故障には鍼、身体全体のメンテにスポーツマッサージ、落車後や広範囲の違和感にはカイロプラクティックに通った方が良いですよと助言しているにも関わらず「10代20代の現役時は故障なんてした事ないし、落車しても1~2日安静にして2週間もすれば勝手に治った。」と言い張って通おうとしない。
痛い痛いと念仏のように発しながら自転車に乗りランニングをしているが、耳にタコが出来るくらいに「痛い」と聞かされる方の身にもなってみろと。
その彼が、最近70万は下らないブルジョアホイールの筆頭であるオーバーマイヤーを買って「このホイール軽いわ~ゴイス~俺はえ~ヴィギンスになれちゃうかもよ~」と子供のようにはしゃいで喜んでいるのを見て一言言わせろ、スポーツの基本は、モノより身体だ。
 

私はペダルは特にサポートも受けていないので自腹で好きな物を買っているが、つい最近XTRのペダルがヤレてきてもう限界だったので買い替える際に、XTにしようかXTRにしようか真剣に悩んだ。
なにせ1万円近く値段が違うのに40gしか重量は変わらず、走りへの影響は泥の日以外では無と言って良いからだ。一方で、先週参戦したITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会では、スイムアップ後のトランジットまでのランニングでマットの下に這わせてある電気系統のケーブルなのか、板の継ぎ目の段差なのかを思いっきり踏んで足底筋を痛めてしまったが、サポートに来ていただいたカイロプラクティックセンター大船の渡辺城作先生にすぐに崩れたアライメントを整えていただき、徹底してアイシング。この翌日にはすぐに行きつけのスポーツに強い病院に行って診断してもらい、更には元MTBのエリートライダーで現在は新宿鍼灸柔整で鍼灸の先生をしているヤマダンナにお願いして鍼治療を重ねて早急の完治を目指している。
ペダルや飲み会の1万円には頭を抱えて悩むが、身体メンテナンスへの1万円は惜しまない。惜しむべきではない。

実際の故障で言うと、専門家ではないので私の経験値での対応法になるが、全体的な疲労や痛みにはスポーツマッサージ、捻挫・打撲などの局部的な痛みには鍼、骨や広範囲の違和感にはカイロプラクティックが効果的だが、その人と症状によって様々なのでこればかりは通ってみるしか無い。合う合わないが大きいのだ。
私はこの3つの治療方を組み合わせる事が多く、カイロで身体全体のアライメントを整えてから疲労して張った筋肉をマッサージでほぐしたり、マッサージした後に残っている局部の痛みや深い患部に鍼を打っている。
これによってかなり効果的に身体の疲労が抜け、怪我や故障の際には致命傷にならずにレースをキャンセルするような事態になった事がない。
ロードレーサーだけに乗っている人は、膝が痛くなる原因の大半はポジションとガニ股のペダリングが元であるのでそこを直せば痛むことは随分減るだろうし、初心者の肩・腰・首もポジションが原因なのと走行中に緊張しすぎて上半身を力み過ぎているいる事が原因である事が多い。ロードレーサーは基本的に故障の少ないスポーツなのだ。
とはいえ違和感が出ていたり落車時のメンテナンスは初期の治療がモノを言うので、レースに出ていないサンデーライダーでも今後の日常生活の事を考えると故障箇所は早急に治しに行くべきだ。

MTBでの落車時の打撲・捻挫ももちろんだし、トライアスロンは水泳・バイクでは故障しにくいが、ランと言えば、故障の大量生産のようなスポーツである。
ランニングからトライアスロンへ入ってきたトライアスリートはその点は十分に解っている方が多いが、バイクからトライアスロンに入った人は膝と腰以外の故障やメンテナンスには慣れておらず、相談出来る人もいないので違和感を感じながら放置してしまっている人が多い。バイクで十分な心肺機能と筋力と根性が形成されているので、同じ足を使うスポーツのランニングでも初めたばかりだとしても簡単に限界まで追い込めてしまうのである。
フォームはバラバラ、でも追い込めるってのが一番いけない。そして根性があるので少々の痛みや違和感も「頑張っているんだからこんなもんだろ」で我慢してしまう。オフシーズンの秋から冬にランニングをしまくり、気が付いたら膝やアキレス腱を痛めてしまっていてバイクのトレーニングが満足にこなせないと相談された事は数知れない。
サイクリストはとにかく無理して我慢して走るな!これが鉄則。20KM以上走るのなら土や芝生の上を選んで走って少しでも負担を軽くするといい、そして痛みが出たらすぐに中止して歩く、そして痛みの箇所をアイシング。トライアスロンやフルマラソンを目指していないのなら気持ちの良い程度で良いのだ。
先日、ロンドンオリンピックマラソン日本代表の藤原新選手のコーチを務めるトップギアの白方健一さん(彼自身もたまにトライアスロンレースに出ているし、福岡国際も走っている)と会って話していた時もこの話題になって、「30歳超えて福岡国際狙って走ってるようなランナーで故障箇所のないランナーなんていないでしょ。みんなスポーツマッサージや鍼に通って体のメンテナンスに気を配ってますよ。僕も昨日、北区の十条まで往復2時間掛けて鍼をブスブスやられに行って来たばかりですし。」と語っていた。

繰り返すが、故障していたり違和感があるなら高級エアロホイールより治療と故障させない動かし方の習得が先。
物欲でカタログ見ながら「う~う~」唸るより鍼治療の痛みで「う~う~」唸るのが正しいアスリートである。
ハッキリ言って練習も苦痛との戦いだ、逃げ出したくなるような苦痛を毎日自ら重ねて強くなる。痛いのが怖いのか?そりゃただの腰抜けだな、強くなるわけがない。
とはいってもモノで物欲を満たす事をコレクション・趣味としては楽しむ事は否定はしないが、それに乗ってスポーツ・競技を楽しむという意味では、モノより身体。自転車は自動車ではないので身体がエンジンである事を忘れないで欲しい。
身体が正常に動いていない事には、良い想い出も作れない。来シーズンに向けて今冬にしっかり治そうではないか。

写真はスバル・ゲイリー・フィッシャーに所属の2004年にアメリカのMTBシリーズ戦である当時の「NORBA」に参戦した時のもの。
元々は日本のトッププロライダーで現在は埼玉のサイクルショップ「オーバードゥ」の店長である戸津井さんにマッサージ受ける。朝は心拍数と血圧を測り、乳酸値を測るのが日課であった。