レンバウ チャレンジ レポート

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大会名・・Rembau Challenge 2015
場所・・レンバウ/マレーシア
日時・・11月29日
天候・・晴れ

使用機材
・フレーム・・MERIDA ビッグナイン7000
・ホイル・・MAVIC クロスマックスSL29
・ペダル・・MAVIC クロスマックスSL TI
・タイヤ・・IRC F&R ミトス F&R 1.8気圧
・ハンドル・・TIOGA ロングホーンカーボンフラット
・ステム・・TIOGA ALナイン
・シートポスト・・TIOGA セプターカーボン
・サドル・・TIOGA スパイダーツインテール2
・グリップ・・ERGON GS1
・バイクシューズ・・MAVIC フーリーXC
・ランシューズ・・SLOMON S-LAB X セリエ
・ハイドレーション・・SALOMON スキンプロ14+3
・サングラス・・SWANS STRIX・H
・ヘルメット・・MAVIC コスミックアルチメイト
・オイル・・FINISH LINE セラミックウェットルブ
・SEV アスリートデバイス
・心拍計・・SUUNTO アンビット3
・バッグ・・CRUMPLER
・インソール・・SIDAS バイクプラス&スパイク
・ニューハレ

昨年に引き続き、マレーシアのレンバウという街で行われるアドベンチャーレースに参戦。

MTB、トレイルラン、カヤック、チュービング、バイアスロンを13回に渡って組み合わされており、総距離は100Km。男子ペアのクラスと男女ペアのクラスがあり、僕はXTERRA女子日本チャンピオンのキャリー・ミエコさんとタッグを組んだ。

アドベンチャーレースと名が付いているが、コンパスを使っての地図読みは無く、テントを持つオーバーナイト(一昼夜)でもなく、スピードが重要になってくるマルチスポーツのジャンルなので、根本的なスピードのあるミエコさんとのタッグは日本最強ペアだと自負してマレーシアに乗り込んだ。

今年もプロクラスにはアドベンチャーレースの世界チャンプであるスウェーデンのTEAM THULE(スーリー)を始め、フランス、ニュージーランド、オーストラリア、台湾、香港、タイ、地元マレーシアからは持久系に強い軍人が多く参加。日本円で賞金が450万円程という事もあって各国からプロアドベンチャーレーサーが来ていた。

説明会では昨年より40%キツくなっているとの説明が・・・ランの距離が増え、MTBでのトレイルが増え、デュアスロン(片方がMTBで片方がラン)が追加されていた。
当初の発表とは変わってスタートは1500Mのランから始まり、バイクに入る。という事はスタートのランで前にいないとバイクで速い集団に入れない事を意味している。

レース当日、やはりマレーシア、気温が高く蒸しているので水分と電解質をタップリ取ってスタートに並んだ。非常に大きなイベントという事もあって県知事クラスのお偉いさんが軍隊に囲まれて登場し「頑張れよ」的な言葉を頂いた。
そしてスタート。
ちょうどキロ4分のスピードで走っていたが、スーリーを含む世界レベルのチームは男女ペアクラスなのに一気に離れていった。トップから40秒程遅れてバイクに入ったが先頭集団はジワジワ離れて行っている。一気に追い付きたい所だがミエコさんを置いて行ってはいけないし、全力になってしまうペースで先頭を引いたら前半で潰れてしまうのでミエコさんの85%程の強度になる感じで進んだ。

1度目のトレランに入り、上げ過ぎないように心拍を見ているが、どういう訳か体感強度とは打って変わって心拍数がとても高い。暑さによるものだろうから水分を多めに取って対処。バイクに戻って走り出すが、牧草地をひたすら進む中で前日の雨によって水牛のウンコが柔らかくなっており、そこら中に落ちていて避けようもなくタイヤが巻き上げるウンコを全身に浴びながら走った。とても臭いがアジアでのレースはそんなもんだ。

2度目のトレランへ。山の山頂まで標高差700Mを直登するレイアウトだが、登り始めた瞬間からどうにも身体が重くて動かない。心拍も異常に速い。何とかミエコさんに付いて行っている感じで、大きな段差が続く箇所では辛すぎて遅れそうに何度もなった。水分を取りながら濃い電解質を大量に取ったりしながら何とか山頂へ。そこからも一気に下って山場の90分のトレランが終わり再度バイクへ。この頃にはもう身体が言う事を聞かなくなっており、全くペースが上がらない。アスファルトの平坦で20数キロしかスピードが出ていなかった。後から聞いた話ではミエコさんも吐き気と戦っていたようでこの時点で止めたかったと・・・。

MTBでのトレイルが25キロだが、直射日光がサンサンと降り注ぐ箇所が多く、インナーローのギアに入ってヨタヨタになってしまっていた。飲み物が受け付けなくなり飲んでは吐いての繰り返しで、目の焦点も上手く合わない感じで何となくの感覚でトレイルを下っていた。足の痙攣が出ており、少し力むと一気に攣りそうで恐る恐るのペダリング。残り7キロ位でミエコさんが復活したので先頭を引いてもらっている時に、何と両足が一気に攣ってしまい何も出来ぬまま道路横の草地にバイクに跨ったまま真横に落車した。そしたら全身が痙攣して首や指まで痙攣して激痛で全く動かせず、全身が硬直したまま呻くことしか出来なかった。そしたら周囲の村人や警察が集まってきて色々な物を差し出してくれたが何も受け取れない。口まで固まって上手く喋られない。そのまま15分ほど倒れていたら徐々に痙攣が解け、這って水を飲んで冷水を全身に浴びた。
「こんな事になったのは初めてだしもう止めよう」と頭の中では考えていたのに、体はバイクに跨ろうとしていた。今思い返しても、無意識でこういう行動を取るんだってビックリしている。
普通のスポーツならスタッフからの強制終了を告げられるような状況だが、ここはアジアでアドベンチャーレース。選手が止めると言わない限りレースは続けられる。
そこからも攣りまくりで激痛との戦いだったが何とかカヤックにたどり着いた。バイクを置いてカヤック乗り場まで2キロのラン。しかし走れないので足を引きずってゆっくり歩いた。

臭いが刺激的で素敵なまっ茶色のドブ川だが、とにかく全身を冷やしたい一心で川に飛び込んだ。カヤックに乗り込むが、最初のうちは足が攣ってカヤックの上で悶絶していたが、次第に痙攣は収まり、今度は上半身が攣ったり・・・。流れのほとんどない川を10キロ、約1時間のカヤッキング。普段から泳いでいるので背中の筋肉的には問題がないが、腰が痛くなるのはどうしようもなく、ひたすら耐えながら10キロを漕ぎ切った。

次はバイクになり、7割りがアスファルトの21キロ。照りつける太陽とアスファルトの反射がエンプティの体力を更に削っていく。所々に楽しい下りもあったが、こんな状態では楽しめなかったのが残念。。。次はチュービング2キロ。車のチューブを浮き輪として使って、浅い川を進んでいく。膝上程の水深なので歩こうとすると物凄い負荷があり、チューブに腹這いになって地面を蹴ったり手で掻くのが効率よく進んだ。しかし臭い川の水しぶきが容赦なく口に入ってくるが、いちいち気にしていられない。チュービングが終わったらそのチューブを持ってのラン3キロ。ハイドレーションバッグを背負いヘルメットを被っているので、この暑さといったらたまらない。

そしてバイアスロンを4キロ。僕は歩く事しか出来ないのでミエコさんに9割りランをしてもらった。2人分のハイドレーションを持ってバイクで先回りしてバイクを路肩に置き、ランでバイクに追い付いたらバイクに乗ってまた先回りの繰り返し。

そして遂にゴール地点が見えてきた。バイクを置いて残り1キロのラン。
最後は走ろうと思って歩くようなスピードで走ってフィニッシュをくぐった。

男女ペアクラスで4位、8時間30分のレースは幕を閉じた。

25年程の競技人生で、1番辛かったレースになりました。単純に体調がイマイチで日本と気温差がある中というのも重なって序盤に潰れてしまったのだろうが、ミエコさんに迷惑を掛けっぱなしになったし、トップを目指してマレーシアに来たのに本当に申し訳なかった。

翌日、KLまで主催者の車に同乗させてもらい話している中でレースディレクターから「来年はもっとタフにするよ!」と笑顔で言われたが、僕は「・・もういいよこのままで・・」と真顔で答えていました。

レース後から1週間の間、肝機能に障害が出て微熱が続き、血液検査でCPKの値が高いまま下がらず疲れが取れなかった。チームスポーツは自分一人ではないから無理をしてしまう。

チームスポーツの怖さを理解したレースでもありました。

メディア掲載

2つの媒体にて登場しましたのでご紹介です。

電通が運営する、未来へのヒントをお届けするカルチャーメディア「COTAS」にて、自転車を始めてプロになり今に至るまでの馴れ初め的な事を語らせて頂きました。記事を読んで改めて思うのは、水の流れのように大した意思も無く、重力に引っ張られるかのようにフワフワと進んできただけだな~と。明確な人生目標も無く、ただ大自然の中を駆け巡っていたいだけという思いでプロを続けている事には賛否両論あるでしょうが、変な奴が1人くらい混じっていても良いよな~と思います。
http://cotas.jp/

全国の福祉施設、行政窓口、医療機関等で無料配布されている、障害福祉マガジン「STIR」(vol.10)にて、日本ろう自転車競技協会ナショナルチーム監督として、ろう者へのコーチングについて語らせて頂きました。今は現役で選手として走りながら監督やコーチとして指導するプレーイングマネジャーですが、ろう者を指導する上では指導者も一緒に走れる事が実は結構大切な事だとわかってきました。指導者が見ていて、選手が戻ってきてから全てを伝えるのでは効率が悪いですし、互いに抜ける部分が出てきます。2017年にトルコで行われるデフリンピックではMTBとROADの2種目があるので両種目の指導となります。
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基礎の大切さ

サイクルスポーツ1月号にて「プロに学ぶ力を速さに換える術」のコンテンツにてコメンテーターとして登場しております。
今回のこの企画は着地点が「基礎の大切さ」という事になって、ひょっとしたら読者は「スペシャルな何か」を期待していて肩すかしを食らったのかもしれない。

タンスの引き出しを閉める際に、引き出しを斜めに押しても角が引っ掛かってビクともしませんが、引き出しを少し持ち上げるようにして真っ直ぐに押せば力を殆ど使わずに閉める事が出来る。引き出し自体が重くて、引き出しの中に何十kgもあるような物が入っていたら、そこで始めてパワーが必要になってくる。

10kgの物を持ち上げる場合に、持ち上げる方向とタイミングがズレると、15kgの物を持ち上げるとの同じパワーが要るかもしれない。それを何十回、何百回と繰り返した先の疲労の差は物凄いことになる。正確な方向とタイミングで行えば余計な負担が掛からず10kgのみの負荷になる。正確な動きが出来ていれば効率も上がるのでより長く続けられる。

基礎という事に関しては、速く走る事以外にももっと大切な安全に上手く走るという部分がある。
自転車競技の多くは集団で走るのでいくらペダルを強く踏めてバイクを速く進ませる事が出来たとしても、周囲のライダーが「こいつ下手だな」とか「あぶねーな」と捉えたら、集団の輪から弾き出される。カンチェのインタビュー記事の中では「落車が明らかに増えている」という事を語っているが、これを読み解くと、苦手なパートや限界付近のでの走行で本人は気が付いていないだけで周囲は危険に感じるようなライディングになってしまっていて、ベテランが「無理しないで後ろに下がれ」とアドバイスをしても、それを聞かずに走って周囲を巻き込んで落車という最悪な結果に。基礎が出来ていて上手いライダーというのは限界付近で走っていても、真っ直ぐ走る、周囲を見られるといった安定感や安心感がある。
こういった限界時に本当に基礎が出来ているのか、上手いのかというのが見えてきて誤魔化せない。
限界付近で追い込みながら道路の白線の上を外れないように走り、追い越していく車の車種やナンバーを復唱したり、練習仲間としりとりをするのも凄くいい練習になる。限界付近での動きと思考の余裕度を高める練習です。

サンセットシクロクロス レポート

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大会名・・サンセットシクロクロス
場所・・たちかわ創造舎/東京
日時・・10月24日
天候・・晴れ

使用機材
・フレーム・・MERIDA ビッグナイン7000
・ホイル・・MAVIC クロスマックスSL29
・ペダル・・MAVIC クロスマックスSL TI
・タイヤ・・IRC F&R ミトス F&R 1.4気圧
・ハンドル・・TIOGA ロングホーンカーボンフラット
・ステム・・TIOGA ALナイン
・シートポスト・・TIOGA セプターカーボン
・サドル・・TIOGA スパイダーツインテール2
・グリップ・・ERGON GS1
・バイクシューズ・・MAVIC フーリーXC
・サングラス・・SWANS STRIX・H
・ヘルメット・・MAVIC コスミックアルチメイト
・オイル・・FINISH LINE セラミックウェットルブ
・SEV アスリートデバイス
・心拍計・・SUUNTO アンビット3
・バッグ・・CRUMPLER
・インソール・・SIDAS バイクプラス
・ニューハレ

「廃校で遊ぶ」をテーマにして、立川にある廃校になった小学校を市がバックアップし「たちかわ創造舎」という文化創造の為の活動拠点が設立されており、その中には、サイクルステーション事業があり、教室にプロジェクターを設置し黒板はそのまま残して自転車のハウツーを学ぶ場所になっており、サイクルショップやカフェやシャワーも完備。室内でもトレーニングも出来るスペースに、校庭で自転車の学校が開催され基礎も学べます。

このたちかわ創造舎の校庭を使用したシクロクロスに参戦。
3歳からのちびっ子から、出場したインターナル・エキシビジョンまで多くのクラスがあり、都心から自走で行かれる場所で1日を満喫。

コースレイアウトは校庭という事もあって一番長い直線で50M程。コーナー立ち上がってから2秒の全力ダッシュですぐにブレーキングでコーナーの繰り返しで、1周に20近くのコーナーがあり1分30秒程の30分のレース。硬い地面に小砂利が浮いている路面なので非常に滑りやすく、前後輪がズルズル滑りながら曲がるというコーナーのスキルを試されるもの。スピードが出ていないのでコケても怪我をしにくい&バイクが壊れにくいので、基礎を徹底的に学べるレースでもあった。

エキシビジョンは賞金レースになり、エキシビジョンを言えども選手は結構ガチ。
シクロクロスと名は打ってあるがバイクは自由だったのでMTBでの出走。コーナーはMTBが少し速く、加速はクロスが少し速い感じが試走で分かったので、抜ける場所はコーナーでのイン差しくらいだと読んでスタート勝負になると思ってスタートに超集中。

ギアの位置やクランクの位置をしっかり確認してのスタートダッシュが決まり、先頭で1コーナーに入り、その後は慎重に進んでいった。後続に3秒ほどのビハインドを得てからは、ミスをしないように確実な動作で1つ1つのコーナーを丁寧にこなして8秒程のビハインドを保って走った。残り5分程で2位争いが激化して6秒程まで差を詰められた場面もあったが、こちらも上手く合わせてペースを上げて差を保った。残り3秒で次の周回に入り、後続は30分が経過してレース終了。ウイニングラップのように最終周を回ってトップでゴール。

今の日本には1回のミスで順位が逆転して、抜く事が難しい、こういったスキルと集中力が試されるレースがほぼ皆無の中で、今回のような体力と脚力ではないスキルが中心のレースが増えて参加者が多くなってくると、その後の様々なレースでの落車の減少に繋がると思います。

優勝 小笠原崇裕 バイクジャーナル
2位 澤木紀雄 GIANT/MET/T-serv/重力技研
3位 斎藤朋寛 GIANT

コーチング

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先週に伊豆の修善寺サイクルスポーツセンターにて5日間の日程で、
文部科学省委託事業 2020ターゲットエイジ育成・強化プロジェクト
          タレント発掘・育成コンソーシアム
          タレントアスリートチャレンジプログラム(自転車競技)
という2020年の東京オリンピックを目指す13~15歳で様々な競技で優勝な成績を残している男女10名を集めて自転車競技の適性を見るというプログラムが日本スポーツ振興センターが主管となり行われた。http://www.jpnsport.go.jp/

このプログラムを行うに当たり、イギリスよりイギリス自転者車競技連盟でレベル1.2.3のコーチを行い、UCI(国際自転車競技連合)でのコーチングも行っていたチェスター・ヒル氏を招いた。チェスター氏が来日するという事で、特別に日本の各種目のコーチ陣のコーチング研修も行われた。ロード、トラック、BMX、MTBの種目から6名のコーチが集まった。

ロードはもちろんトラックやBMXに乗る事も初めてという参加者が大半だが、運動神経や基礎体力が十分に備わっている。例えば陸上100Mなら11秒0。1500Mなら4分ちょい。今回はバレー、バスケ、スキー、野球、陸上、サッカー、から同じように全国レベルのスポーツ歴を持った参加者達。
簡単にな説明や走り方の基礎を行って、慣れたら250バンクにイン。少ししたらバンクに上がって周回。3本ローラーは10分も掛からずに全員が走りながらボトルの水が飲めるまでになった。

ワットバイクでのFTPテストでは、持久系の種目だった参加者は体重の4.5倍ほど出ており、一番だったのは5.3倍。ダッシュでのピークパワーで一番だったのは1600ワット超え。
自転車に乗って2~3日です。クリートの位置もポジションも目視で「ストレスが無い」で合わせただけ。ペダリングや体の使い方は簡単に教えたのみ。

コーチ研修ではトラックやロードでは最強国となっているイギリスのロジックを色々と教わった。
内容は本当に単純でした、しかしそれを正確に何年にも渡ってやり続けることが出来るかどうか。チェスター氏は毎日何度も同じ事を言っており「ATTITUDE」(態度)が重要だと。このATTITUDEがあった上で「COMMITMENT」(献身)、「OWNERSHIP」(当事者意識)、「RESPONSIBILITY」(責任)、「EXCELLENCE」(卓越した結果)となり、各頭文字を取って「CORE」(コア)を合言葉にイギリスではアマチュアからトッププロまで一貫して同じ意識、プログラムで取り組んでいる。

全日本女子ロードレース11連覇を達成し、引退後はJOCのスポーツ指導者海外研修で自転車のコーチングを学び、現在は競輪学校で教官となり教えている沖美穂さんとチェスター氏と話した会話が非常に勉強になった。日本人およびアジア人はウォームアップをやり過ぎる、と。イギリスでは自転車に乗ってのアップは20分のみ、それでベストまで持っていく事で余分な体力を使わず、時間も使わない。20分でベストに持っていく為にはアップの練習も必要だと。確かに国内のレースに行くと1時間とかローラー踏んでいたり、スタート前まで忙しなくストレッチしてまた自転車に乗ったりと、本当に動き続けている。しかしヴィギンスもフルームもクリス・ホイもこの20分アップのみだと言う。ホイはトラックの選手なので1発勝負のリカバリーが効かない競技なので、十分に体が動いていないといけないはずだ。ヴィギンスやフルームはタイムトライアル(TT)の場合で、TTは大体1時間前後なので競技時間は長いとは言え、スタート直後から追い込む競技だ。この20分アップを行ったら、スタート前まで椅子に座って音楽でも聴いてリラックスしながらレースに集中していく事が重要だと言われ、日本の場合は音楽は聴くもののスタート直前までローラーを踏み続ける選手が多い。当たり前だが、経験でモノを教えているわけではなく、全て科学的に立証された事に経験をプラスしている。
自分自身では、経験が邪魔をするという事が何点も上がってきた。
日本のトッププロが長年に渡って行ってきた事、良いと言われている事が、世界という場所を見た途端に全く時代遅れで、意味の成さない事だった。以前に元MTB世界チャンプのホセ・ヘルミダにインタビューした際に、毎年トレーニングを疑って変えていく、と言っていた事と完全に一致。「自転車競技はこうだ!」といった伝統とか風習とか法則とかみたいなものは、何代も引き継ぐ部分と日々アップデートしていく部分がちゃんと分けられていないのが今の日本なのかもしれない。メニューがどうだとか、ペダリングがどうだとか、その前に根本的な考え方を変えていく勇気が必要なのかもしれない。経験を積み重ねて得たモノを常に疑って時には180度変える事は本当に勇気が要るとは思うが、強い意識とは想い続ける強さもあれば、変えるという強い意識もある。
私が質問した内容の一つに次のようなものがある。
「疲労があったり、体の動きがなかな出てこなくて、30分程のアップでは目標値の数値で走る事が出来なくてメニューを中断し、しばらく走っていたら動くようになったのでメニューを行うという事があるが、こういう場合でも20分アップで良いのか?」
に対しての返答で、20分アップでメニューが出来ないならば、強度を下げるか、行わない、と。そんな日は強度の高いメニューを行うべきではないと。しかし、ロードレースではスタート後は体が動かなくて辛くて仕方がないのに、中盤になったら体が動き出して、そこからアタックして逃げ集団のままゴールとかあるから、こういった場合の練習になるのでは?と更に聞いたら、それはあえて行う事ではなく、レースを走りながら覚えて行く事だと。練習では常に良いコンディションで追い込むことが重要で、疲労時に無理して耐えて走る事では無い、とも。
日本では働きながら走っているライダーが殆どで、時間がないから走られる時に走っておかないといけないから疲れていても無理して追い込んで走るライダーが多いが、それはどうなのか?に対しての返答は、本当に強くなりたいのなら集中できる環境に変える、だった。こちらの意図が完全には伝わってなかったのかも?と考えたが、チェスター氏からすると本当に強くなるというのは世界を目指すという意味なので、働きながら得られる程度の強さなんてのはそもそも頭にないのかもしれない。が、イギリスのトラック選手ではオリンピックに出られるかどうかのレベルでは食べていけない選手もいるので働いている選手もいると言っていたので、やはり私の質問の意図が伝わりきってなかったのであろう。

イギリスでは高い意識と基礎が大切で常にチェックしていると。
意識はCORE。基礎とはブレーキやパイロンスラロームやボトル拾いといった本当の基礎の基礎。日本では乗り始めた初心者が1~2回行うのみの内容を、イギリスではプロも定期的に行っているとの事。その内容は私が普段のスクールで行っているものとほとんど同じだが、こういった事を世界のトッププロにも行わせているという点が非常に興味深かった。日本ではロードで板の上の一本橋を上手く走られても何かあんの?そんな時間あったら沢山走れ!で終わってしまうが、イギリスでは全てがロジカルに考えられていて、メニューの内容一つ一つに理由が出されて、そのシーンを考えさせる。落車で大怪我するか、怪我で済むか。1秒差で勝つか負けるか。この差が日頃の細かな基礎でありスキル。これはこのブログでもず~っと言ってる事だが、チェスター氏が断言してくれたのでこれからも自信を持って言い続けたい。

参加者は5日間(半日2日間、1日中3日間)で23時間の自転車トレーニングを行った。夜には毎日2時間ほどの講義もあった。かなりキツイ5日間だったと思うが、こういった事に耐えられる高いモチベーションにタフな身体が備わっているダイヤの原石のような中学生が日本にはゴロゴロいるんだろうか?今の日本のプロ自転車選手の身体能力が低いわけではい、他のメジャー種目のプロに引けを取らない数値は出るし、体の使い方が物凄く上手い選手もいる。ただ、自転車競技には向いていない資質だったから日本ではプロになれても世界レベルには達しなかったとか、身体資質は高くはないが自転車競技にはバッチリな適性があったから日本ではプロになれたが世界レベルには達しなかった、というのもある。欧州ではこういった適性を見極めるシステムが秘密裏にあるようで、今回のこのプログラムでは日本人がどういった競技でどの程度の成績があると自転車競技に適性があるのか、という事を調べていく一歩を踏み出した。

トラック、ロード、BMXの3種目のトレーニングを行い、夜の講義では世界の大会で活躍した際にインタビューを受けての受け答えのメディア対応の練習も行った。中には半分を英語で受け答えし、記者に扮したコーチ陣の質問に対して記者が欲しい言葉を察知して返答したりと、非常にレベルの高いものだった。ただ成績を出すだけでは数多のスポーツの中からピックアップして取り上げられたりはしません。メディアに対してメディアが「報道したい」、「注目したい」と思わせる対応をしなければいけない。これは成績と同じくらいに重要です。活躍は知ってもらって初めて活躍になります。知られなければ自己満足で終わってしまう。

この研修を受け、日本から世界へという想いが一層強固になった。
日本では自転車に追い風が吹いているので、私は自転車競技を世界レベルにという側面から携わっていければと思います。皆さんも各々で出来る何か一つで追い風を更に強くしていって下さい!